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  農薬の「使用基準」を守って、害虫防除をしていますか?

1.農薬の使用基準とは?

  農薬の使用基準は、農作物に残留基準値以上の農薬が残留しないようにするための基準です。
  その中味は、ご存知のように、
○登録農薬以外は使用しない、
○農薬を使用する場合に、決められた濃度以上では用いない、
○農薬ごとに決められた使用回数以上に使用しない、
○農薬を使用する場合に、使用量を守る、
○農薬を使用する場合に、収穫までの間の決められた期限を越えて農薬を散布しない、
○使用方法は、農薬の決まった施用方法(例えば、粒剤の場合に土壌混和処理を行う
  など)を守る、ということです。

  この基準を守っていれば、残留基準をオーバーすることは無く、逆に言えば、使用基準はそのようになるよう
に決められています。なお、基準値がどのような根拠で決められているのかについては、別途説明します。
  
2.農薬の使用基準は何を見れば分かるのでしょうか?

  農薬の入った瓶や袋に書かれています。また、インターネットで調べることもできます。それでは、ここでノーモルト乳剤(クリック)の例を参照して下さい。

 左側の欄から順に、作物名、適用病害虫名、希釈倍率、使用液量、使用時期、本剤の使用回数、使用方法、総使用回数と書かれています。総使用回数とは、脚注に「本剤およびテフルベンズロン(その有効成分)を含む農薬の総使用回数」とあります。

 「その有効成分を含む」とは、一般的に同一成分を含む粒剤と水和(乳)剤、同一成分を含む別の商品名の農薬、同一成分を含む混合剤などが該当します。同一有効成分を含む農薬の使用回数は全て数え、延べ使用回数が総使用回数となります。
  
3.農薬の人や環境への影響にも十分に配慮して使用する

 農薬使用において、作物残留だけでなく、人体への影響や環境への影響にも注意すべきことが書かれています。人体への影響としては、農薬の毒性の強さによって「毒物」「劇物」「普通物」の順に分けられています。「普通物」と書かれていても人体への影響があるものが多いので注意し、防護服、手袋、長靴、マスク着用などの安全対策の必要性の有無をよく確認して下さい。環境(生態)影響としては、水生の魚、甲殻類、藻類への影響、カイコやミツバチへの影響、鳥類への影響があると書かれている場合には、農薬による影響が生じないように使用する必要があります。

 水生生物への影響がある場合には、散布剤が河川や湖沼へ農薬が流れ込まないように、あるいは使用器具などを洗った水が流れこまないようにします。カイコへの影響がある場合には、桑畑の近隣でその農薬を使わないか、ドリフト(飛散)に対して万全の対策を採る必要があります。ミツバチに対する影響がある場合には、ミツバチの主要な訪花へのその農薬の散布を控える必要があります。鳥類への影響がある場合には、近隣の林地などへ農薬がドリフトしないようにします。
  
 農薬による作物への薬害について書かれていることがありますので、この点にも注意が必要です。

 また、農薬のポジティブリスト制の開始に伴い、隣接して栽培されている作物へのドリフト対策も必要となっています。

4.薬剤抵抗性害虫が出現した作物やマイナー作物では登録農薬が不足しがちなので、農薬以外
  の防除対策も十分に講じる

 農薬の使用基準では、登録農薬を使用することが大前提となっています。しかし、主要害虫で薬剤抵抗性が発達した場合には、効果のある農薬の種類が限られてきて、栽培期間中に制限回数以内で無事に害虫による被害から作物を守ることが難しい局面も生じます。

 例えば、最近、トマト栽培では、新しくタバココナジラミ・バイオタイプQという害虫が西日本を中心に東北地方までの30都府県で発生しています。この害虫は、シルバーリーフコナジラミに良く効いたアドマイヤー、ラノー、チェス、トレボンといった薬剤に抵抗性を示しています。そして、まだ良く効いている薬剤は、ベストガード、スタークル(アルバリン)、サンマイトなど薬剤の数が減っています。トマトの長期取りなどでは、このコナジラミと媒介ウイルス(TYLCV)の被害を、これらの薬剤の制限回数内で防除するのは大変です。

 また、マイナー作物では、登録農薬の種類が少ないのが一般的です。この場合にも、薬剤の制限回数内で防除するのは難しい事態も生じます。このような場合に、効果的な殺虫剤をいつ、どのような時に使用するのか、殺虫剤以外のどのような対策をあわせて行うべきか、十分に検討して実施する必要があります。IPM(総合的害虫管理)技術を駆使して、この難題を乗り越えていく必要があります。


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